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『まだ15歳なのに、信じられないわ』
『双子なんですって?』
『男の子同士で裸で寝ていたんでしょ?気持ち悪い・・・』
『なんでそんなこと・・・ほらあれ、なんて言うの?ホモ?』
『学校でもいつも一緒にいるんですってね。息子が言ってたわ』
『やっぱり親御さんがほら、あれだから・・・』
『血は争えないわよねえ・・・』
『いやだわ、うちの娘と同じクラスなのよ』
『本当よね、先生に相談したほうが良いかしら』
『本当、気持ち悪い・・・転校してくれたらいいのに・・・ねえ?』
『外国?』
『うん、来週から叔父さんのところに行くよ』
『一緒に行く!』
『だめだよ、母さんと暮らすって決めただろ?』
『嫌だ!一緒がいい!置いていかないで・・・連れてってよ!』
『一緒にはもう居られないんだよ・・・解るだろ』
『全然解んない・・・解んないよ!ねえ、俺を捨てるの?』
『違うよ、捨てるんじゃない!俺だって一緒にいたいけど・・・』
『どうして別々のところに行かなくちゃならないの?もう離れて生きてなんかいけないよ!』
『ごめん・・・』
『ひどいよ・・・俺を一人にしないで・・・』
『ごめん・・・全部俺が悪いんだ。本当に・・ごめん』
『待って・・・待ってくれ。もう少し話がしたい』
『黒瀬先生?』
『君のことが・・・知りたいと言ったら・・・迷惑だろうか』
『どうして・・・僕を?』
『君が、知りたいんだ。教えてもらえないだろうか・・・私に・・』
『僕の何が知りたいんですか。兄の、代わりですか』
『それは違う!純粋に、君のことを知りたいと思った。会ったばかりでこんなことを言ったのは・・・恥ずかしいが、私も初めてなんだ』
『まるで・・・愛の告白ですね』
『・・・っ確かに・・・そう、取ってくれても構わない』
『僕は、やっかいな人間です。きっと先生は幻滅します』
『私は君よりも、ずいぶん長く生きてる。そんな心配は・・・』
『幻滅されて、捨てられるのは・・・嫌なんです』
『捨てたりしない!絶対に!』
『口ではどうとでも言えます。僕は簡単に人を信用しないたちなので』
『では、どうすれば信じてもらえるんだ?』
『どうでしょうね・・・』
『証明してみせる。私が本気だと・・・どうすればいい』
『・・・今、僕にキスできますか。この人通りの多い、道の真ん中で』
『・・・っそれはっ・・・』
『そうでしょうね。・・・それでは、失礼します』
『待っ・・・』
「・・・い、おい!」
黒瀬の大きな手に揺さぶられて、理人は目を覚ました。
理人は全身に冷や汗がにじみ、シーツを力一杯握りしめていた。
「かず・・き・・さん・・・?」
「悪い夢でも見たのか」
理人の冷たい汗でぐっしょりと塗れた身体を黒瀬は腕の中に抱き寄せた。
たくましい腕に、理人は必死にしがみついた。まだ震えが止まらない理人の額に、黒瀬は優しく口づけた。
「一樹さん・・・一樹さん・・・っ」
「・・・ここにいる」
「・・れないで・・・お願い・・」
「ここにいるから。少し・・・寝ろ。大丈夫だから」
「・・・一樹さん・・・キス・・して・・・」
黒瀬は理人の顔を撫で、唇を重ねた。
やっと瞼を閉じた理人の柔らかな髪を、黒瀬は何度も繰り返し撫でた。半開きの唇を指の先でなぞった。
そうしていくうちに黒瀬の名前を呼びながら、理人は次第に眠りに落ちた。