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2 欧介
「……っ…ん…」
ぎしっ、ぎしっと規則正しくベッドがきしむ。
今日の男は、相性がいい。顔も好み。
ただちょっとしつこいのと、キスが下手。
キスは、やっぱ大事なんだよなあ…残念だけど、もうないな。
向こうは気に入ってくれたみたいだけど。
「あっ…んん…っ…もう…っイく…っ…」
俺がそう言ったのを合図に、相手の腰の動きがエスカレートする。
ほどなくして、無事にイった。向こうも、俺も。
シャワーを浴びて、庭のテラスチェアに座る。セックスの後、ここで煙草を吸うのが至福の時。
暑いのがまた良くて。
太陽の熱で、昼間から性行為にしけこんでいた罪悪感を浄化してもらえる感じがいい。
せっかく気持ちよく日光浴していたのに、さっきまで俺にハメていた男がわざわざ挨拶にやってきた。
あまり上手くないキスを長々として、出て行った。
しつこく舌を入れられて気持ち悪い。
手の甲で唇を拭って、もう一度椅子にひっくり返った時、珍しいことが起こった。
隣の家の二階に、彼がいた。
あそこの窓、開いてたことあったっけ?
咲枝さん、おばあちゃんとおじいちゃんしかいなかったのに。
高校生かな。
こんな田舎に、ずいぶんと垢抜けた子がいたもんだ。
……あ、そうか、夏休みか。今時高校生が夏休みに田舎に来るなんて珍しい。
普通バイトとか、彼女とか、海とかキャンプとか…
……こっち見てる。
あ、そうか。
もしかしてさっきの見てた?
そりゃあ申し訳ない……刺激強いよね、男同士のキスシーン。
それも結構長かったし。
キモ、とか思ってるんだろうな。ごめんね、変なもの見せて。
窓閉まった。
かわいい子だったな。
嫌われただろうけど。
ピンポーン。
この家のインターホン、そろそろ取り替えないと、音質悪すぎる。
「はーい?」
『えっと、となりの咲枝です』
「はいはーい、今行きます」
若い男の子の声。まさかさっきの高校生?苦情だったらどうしよ。
玄関を開けたら、予想どおりさっきの子が立ってた。
かわいい。
見た目はいまどきで、雰囲気は優しげで素直な感じ。
ちょっといぶかしげな表情なのは、やっぱりさっきのが良くなかったんだろうな。
気まずいだろうに、わざわざ西瓜を持ってきてくれた。
これだけでしばらく生きて行けそうなサイズ。
咲枝さんのお孫さんかって聞いたら、驚く情報もくっついてきた。
越してきたって言った。
住むんだ、隣に。
18歳。
未成年には手を出しませんよ。そんな鬼畜じゃないです。
でも友達になるくらいなら、許してくれる?
「櫻田 欧介です。隣のよしみで、よろしくです」
「…咲枝 律です」
律。
この律との出会いが、投げやりに生きてきた俺にとって宝物になった。
高校生に本気で恋をするなんて。
そもそも誰かに恋するなんて、何年ぶりだったろうか。
出来るなら、君が大人になっていくのをこの目で見てみたい。
出来るなら、君が大人になるのを待たせて欲しい。
律。